看護師転職 美容整形外科
特に働いた経験のない方は、「美容外科」にどんなイメージがあるでしょうか。その名の通り、「美容」を目的として訪れる患者さんが多いことから、病気を治療しにくる患者さんがメインの病院やクリニックとは、また違った印象を持っている方もいるかもしれませんね。
今回お話しするのは、ある美容外科で働く看護師が実際に体験したできごとです。そこには「思わず感動!」のエピソードが。美容外科の現場を垣間見て、あなたは何を思いますか? 転職先の候補の一つとして考えている方、あまり考えてはいなかったという方も、ぜひ読んでみてください。
いつもの美容外科にはどんな患者さんが多い?
美容外科の守備範囲となるのは、二重術などの目元から、鼻やフェイスライン、口もとなどの美容整形、豊胸や脂肪吸引といったボディの施術、美容皮膚科の分野でもあるエイジングケアや美肌レーザー、注入施術、そのほかメスを使わないプチ整形や、ワキガ・多汗症治療まで、非常に多岐におよびます。
日本の美容外科は全体的にレベルが高いということで、海外、特に中国や韓国などから来る患者さんが増えているようです。看護師としてそうした患者さんに英語で対応ができれば、より仕事の幅が広がるかもしれませんね。
最近では昔よりもだいぶハードルが下がって、著名な芸能人も施術を受けたことをSNS上で発信したりしています。そういうところから興味を持って、中には「○○さんのインスタを見て来ました!」といった患者さんも。思い悩んで来られる方ばかりではなく、そうした元気な患者さんが多いのは、確かに一般的な病院やクリニックと少し違っているところでしょう。
それぞれのクリニックごとに得意分野があるかと思いますが、たとえば鼻の整形で有名なところなどは、その噂を聞きつけて「がっつり鼻を整形したいです!」なんて、意気揚々とやって来る患者さんもいるようです。もともときれいなお顔立ちの方で、「もっときれいになりたい!」と来られる美意識の高い方も少なくとか。
もともと元気な患者さんも、施術に満足してうれしそうに帰っていくのを見るのは喜ばしいことです。しかしもちろん、中には本当に思い悩んで美容外科へ来る患者さんもいます。
施術室で突然の涙、そのワケは……
その女性は最初、プチ整形の施術を受けにクリニックへ来ました。メスを入れずに顔の立体感が出せるヒアルロン酸を注入したり、シワを改善するボトックス注射をしたりしていました。
私もまだ美容外科では新人だった頃のことです。ある日、いつも通りにその女性への施術を進行していた中で、麻酔クリームを塗るために施術室に入りました。すると、そこには目から涙をポロポロと流している女性の姿が。
「え!? どうしたんですか? 大丈夫ですか??」
驚いて彼女のもとへ行くと、ますます涙。元気な患者さんが多かった中で、初めてそんな患者さんを目の前にした私は少し動揺しつつも、そっと寄り添って彼女が落ち着くのを待ちました。
「私、小さいころからブスだって言われ続けて。自分の顔に、ものすごくコンプレックスがあるんです……」
やがてぽつりぽつりと、自分の思いを吐露し始めた女性。子どもの頃にいじめられて不登校になってしまった経験も、その人生に影を落としていたようです。「ずっとずっと、苦しくて。顔に自信がないから、まともに前を向いて歩くこともできずにいるんです……」。
そこまで思い詰めて美容外科のクリニックの門をたたいた彼女。「前を向いて歩けるようになりたい」と、思い切ってプチ整形の施術を受けたものの、それだけではまだ根深いコンプレックスを拭い去ることはできなかったようです。
「整形手術がしたいという気持ちはあります。でも、親からもらった体に傷をつけるのは、やっぱりどうしても抵抗があって……」
そこには見違えるような患者さんの姿が
周りから見ればささいなことでも、目に見えない心の傷は想像以上に日々の平穏な暮らしを蝕んでいることがあります。美容整形外科で働く私たちからすれば、「整形手術に踏み切ることで、彼女の人生はきっと開けるだろう」と思うものの、それを無理強いするわけにはいきません。
私たちはとにかくていねいに一つひとつ、美容整形手術のシミュレーションを行い、彼女の誤解がないように説明を重ねました。そして最終的に、彼女は手術をすることを選んだのです。
約1カ月後――。手術の腫れもだいぶ引いた彼女が、クリニックに訪れました。そこには別人のように生まれ変わった女性の姿がありました。かつて「自分のブタ鼻が嫌い」と言っていた鼻もすっと鼻筋が通り、通りすがりの男性が皆ふり返るような美しい顔に。なにより、その晴れやかな表情が手術前とは一変していたのです。
「私、本当はもう死のうかと思っていたんです。でも今は、こうしてまっすぐ前を向いて歩くことができます。みなさんのおかげです。本当に、ありがとうございました……!」
そういって涙ぐむ彼女に、私たちも思わず涙。新しい人生を歩み始めた彼女を心から祝福しながら、この仕事に改めてやりがいを感じた瞬間でした。