華やかな美容業界で働く看護師に聞いた職場の「ストレス」とは?
体力が求められる仕事内容や人間関係をはじめ、どの病院やクリニックでも看護師を取り巻くストレスの問題が聞かれます。今回は、5年間の看護師経験を経て美容業界へキャリアチェンジしたAさんが、これまでの職場で感じた「ストレス」についてインタビューしました。
〜インタビュアーのプロフィール〜
Aさん(29歳)美容外科クリニック勤務
経歴:看護師専門高等学校卒業後、20歳〜25歳まで総合病院に勤務、26歳でエステ業界に転職、27歳で海外留学、28歳で美容外科クリニックに転職
総合病院勤務時代に感じていた「看護師のストレス」
ーーAさんの現在のお仕事内容を教えてください。
現在は美容外科クリニックに務めていて、手術でドクターの助手や患者さまへレーザーの施術に関わっています。
——現在のクリニックを選んだ理由はなんでしたか?
病棟での看護師時代から美容業界で働きたいと思っていたのですが、学校の奨学金返済期限などの事情があり、5年間は自由に仕事を選ぶことができませんでした。その後、エステティシャンを経験した際に「もっと深い美容の知識を身に付けたい」と思ったため、現在の美容外科クリニックへ転職しました。ここはお給料の水準も高く、業界内で有名な先生もいて、私にとってはとても魅力的なクリニックだったんです。
——今回は「看護師のストレス」をお伺いしたく、1社目の総合病院で勤務していた際は、どんなストレスを感じていましたか?
5年間の中で私が担当したのは整形外科と脳外科だったんですが、どちらも認知症患者がとても多かったんです。その方たちの対応は想像以上に大変でしたね。例えば骨折をしてドクターから絶対安静の指示が出ていることを説明しても理解は得られず、動いてしまいます。そのような患者さまには前もって、ご家族に抑制同意書への署名の同意を取らなければならないし、抑制することによって再燃し、大声で叫ぶ患者さまも少なくはありませんでした。
あとは、看護師はプライドが高い方が多くて、そのうえ年功序列のシステムなので、若い私たちが職場で意見を言える雰囲気はなく、いつも言いたいことをガマンしていました。それもストレスだったと思います。
——それは確かにハードですね。そのストレスを解消するために、何か対処されていましたか?
幸い私には同期がいて、同期たちも似たようなストレスを抱えていたので、お互いにグチを言い合っていましたね。それが一番の解消法でした。
看護業界よりも大変?美容業界で感じる「ストレス」
——2社目のエステでは、どんなストレスがありましたか?
2つあって、1つは勤務時間が長く体力が必要なこと。エステは勤務開始時間が遅い分、帰りも遅くなるんですが、さらに残業もあって長時間労働になりがちです。そのうえ、ずっと立ちっぱなしでお客様と会話をしなければならないなど、かなりパワーが必要なんです。
もう1つは、「指名を取らなければいけない」というプレッシャーです。私が勤務していたエステでは、お客様から指名をいただく必要があり、それぞれのお客様の性格やご要望を踏まえて対応を柔軟に変えなければなりませんでした。
——体力と気力のどちらも必要なお仕事だと思いますが、そのストレスは、どのように発散されていましたか?
プライベートで発散することが多かったです。例えばお酒を飲みに行く、旅行に行ってリフレッシュするなどですね。
——現在、勤務されている美容外科クリニックでも、同じようなストレスを感じますか?
そうですね。エステと同じく残業が多く長時間労働も少なくないので、体力勝負の一面はありますね。最長で5〜6時間続けて行う手術もあります。残業でプライベートの時間が削られてしまうことも少なくありません。あとは、先生が厳しいので「ちゃんと勉強しなきゃ」というプレッシャーも感じますし、真面目に仕事をしていない先輩から時に理不尽なことを言われてイラッとする瞬間もあります。
——なるほど。今もプライベートで息抜きをしながら、ストレスコントロールをされているのでしょうか?
今の仕事を始めてからは、少し考え方を変えたおかげで以前よりストレスと上手に付き合えるようになってきました。イラッとしたときにすぐに反論せず、一呼吸置くようにしてみたら、少しラクに過ごせるようになったかなって。
周囲の看護師たちが感じている「ストレス」
——Aさんは、ご自身でしっかりストレスマネジメントができているんですね。周囲の看護師さんからは、どのようなストレスの悩みが聞かれますか?
夜勤で生活リズムが大きく狂ってしまうのはツラいと聞きますね。私も総合病院勤務時代に夜勤を経験しましたが、1日夜勤をすると、そこから通常の生活リズムに戻すのがすごく大変なんです。それなら夜勤専門の看護師のほうがマシだと思っていました。
あとは、どこの病院やクリニックにも1人はいるお局さんの存在が、若手の看護師たちのストレスになっていると思います。その多くは40〜50代で、人にはあれこれ命令するのに自分はまったく動かずイスに座ったまま。とにかく自分にとって都合が良いように現場を取り仕切る、といった感じです。私が勤務している美容外科にも、40代のお局さんがいます。
——確かに「お局さん」の存在はストレスの種になりそうな気がします。それ以外だと、お給料面の不満なども聞かれますか?
美容業界は比較的給与水準が高いんですが、看護業界は全体的に安いと思います。私が最初に務めた総合病院もものすごく安くて、満足できる金額ではありませんでした。現在のクリニックでは、毎月のお給料の他に先生たちの売上目標の達成率によって報奨金がプラスされるので、良いモチベーションになっていますね。
——看護師には多くのストレスがあることがわかりましたが、Aさんはこれらのストレスの原因はどこにあると思われますか?
明らかに人が足りていないことが一番の原因ではないかと思います。欠員が出てもすぐに埋まらないことが多くて、そうなると必然的に看護師に負担がかかります。みんな精神的にも肉体的にも余裕がなくなるのでピリピリしたり、事故につながったりして良くないなと感じます。その点が改善されれば、看護師のストレスも軽減するのではないでしょうか。