看護師転職 整形外科のあるある! 皆さんも経験していますか?

看護師転職 あるある

看護師として働くみなさんも、仕事の中ではいろいろな「困った!」場面に遭遇するのではないでしょうか。対人間の、しかも一筋縄ではいかない病気に立ち向かっていくようなお仕事ですから、想定外のことも多いのではないかと思います。

 

今回お話しするのは、ある看護師が整形外科で働いていたときに実際に体験したできごとです。あなたにとっても「あるある!」なのか、「え、そんなこともあるの!?」という驚きのエピソードなのか、ぜひ一度読んでみてください。

 

 

ある日、整形外科を受診しに来たのは……

 

その方は、80代半ばのおばあちゃんでした。おじいちゃんと2人で仲睦まじく暮らしていた、本当に普通のおばあちゃんです。息子さんご家族は別々に暮らしていましたが、それでもまったく問題のないほど、しっかり自立して生活されていました。ところが……。

 

ある雨の日に、庭先ですべって転倒。思いがけず大腿骨を骨折する大ケガをしてしまったのです。実は整形外科に入院するお年寄りの多くが骨折してしまうのが、この大腿骨。上半身を支え、歩行するのにも大きな役割を果たしている太ももの骨です。高齢になってこの骨を骨折してしまうと、そのまま寝たきりになってしまうケースが多いことでも知られています。

 

そのおばあちゃんもそのまま入院となりました。先生がケガの状態をよく診たあと、私たち看護師はある確認をとることになります。それは、ご家族に「抑制同意書」へのサインをお願いすることでした。

 

80代、90代という年齢になると、突然の入院で認知症を発症するケースが多々あります。それまではまったく症状のなかった人でも、急にご家族と離れた個室で生活することになり、骨折などによって体の自由も聞かなくなり、今まで普通にしていたトイレもおむつ対応になってしまうような状況に陥ると――若い人が急激な環境の変化でウツになってしまうように、高齢者の場合は認知症の気が出てくることがあるのです。

 

 

受け入れられない現実を完全拒否する息子さん

 

そのおばあちゃんにも、その可能性がありました。もし認知症の症状が出てしまったら、大腿骨骨折の大けがをした絶対安静の体であることを忘れて動き回ってしまい、事故が起きる危険があります。そのため、認知症が出てしまったときに体を抑制し、ある程度動けない状態にするため、医師の先生の指示でそのおばあちゃんのご家族に抑制同意書へのサインをお願いすることになったのです。

 

「そんなの、絶対に嫌です!」

 

入院の事態にかけつけた息子さんは、開口一番そう言って私たちのお願いを拒絶しました。

 

「うちの母は認知症になんてなっていないですから。それなのに、なんで拘束されなきゃならないんですか!」

 

取り付く島もないほどの拒絶でした。もちろん私たちもその気持ちはよくわかります。今までまったく認知症の気がなかった自分の母親が急に認知症になる可能性があると言われて、体の自由を奪う同意書にサインをしろなんて言われたら……。誰だって「そんなわけない!」「おかしいじゃないか!」と声を上げたくなるでしょう。

 

しかし、もし認知症が出てしまったら、患者さん自身に絶対安静をお願いするのはとても難しくなります。そこで抑制しなければ、自分の体の状態などすっかり忘れて動き出してしまうでしょう。さらなる転倒によってまた違うところを骨折してしまったり、頭を打ってしまったりと、何か事故が起きてからでは遅いのです。私たちはとにかく何度も丁寧に、そのことをくり返し説明するしかありませんでした。

 

「大丈夫ですから。そんなことしなくていいです!」

 

看護師長まで総出で説得に当たりましたが、息子さんには一切聞く耳をもってもらえませんでした。私たち看護師にとっては本当に「困った!」状態です。こういった場合、対策としては「絶対安静の間、ご家族に一緒に同じ病室に泊まっていただく」という方法をとることもまれにあります。しかし、日々の生活もありますから、なかなかそれを実現できるご家族は少ないでしょう。

 

ちなみに、入院して1週間ほどでオペをした後、車椅子で動けるようになる回復期を経てリハビリをし、お家に帰っていただくまで、こうした高齢者の大腿骨骨折による入院はだいたい3、4カ月にもおよびます。

 

 

予期していた最悪の事態が、現実に……

 

どうなることかと思っていましたが、最終的には担当医師の先生が自ら懇切丁寧に説明。入院したその日の最後には、とうとう息子さんに抑制同意書へサインしてもらうことができました。

 

そしてまもなく……そのおばあちゃんはパニックを起こしてしまったのです。

 

「看護婦さーーーーーん!!!!!」

 

真夜中に病棟に響き渡る声。もはやナースコールを押すことすらわからなくなってしまった、おばあちゃんからのSOSでした。センサーマットは鳴りっぱなし。点滴の針も抜いてしまって……。まさに、最悪の事態が現実のものとなってしまった瞬間でした。

 

しかし、抑制同意書にサインしてもらっていたのでなんとか事なきを得ることができました。大変なときにはご家族にも来ていただきながら、どうにか無事に退院までこぎつけることができたのです。

 

認知症は脳外科の専門ですが、このように整形外科の入院患者さんでもよく対応が必要になる病気です。むしろ、脳外科の場合は寝たきりになってしまっている患者さんも多いので、「動いてしまって危ない!」という事態は整形外科のほうが多いくらいかもしれません。

 

私たち看護師にとっては本当に困ってしまう事態ですが、体がしっかり回復して退院することができれば、そのあとに認知症の症状は改善していくこともあります。それを願って、私たちは今日も患者さんに向き合っているのです。みなさんも、同じような経験をされているのではないでしょうか? 最後に患者さんの笑顔を見ることができるように、今日も一日、ともにがんばりましょう!

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